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と、いうわけで。
「やってきましたデパート」
「これがでぱーとですか、ゆうきさん」
ここにくるまでの途中。周りの視線がとても痛うございました。
特に男連中の人を殺せそうな怨嗟の視線が現在進行形で降り注いでおりますよ。
とにかく、この目立つ服をどうにかしようと思います。
この日本という和の国で和装は目立ちすぎるんだ。
「……なんかおかしくないか?」
「歩いてる人もみんなゆうきさんと同じ格好してますね」
……あ。俺の服着せてくればよかったんじゃないか?
何故気づかなかった俺。
リルカはそんな打ちひしがれている俺を尻目に袴の裾から隠しきれない尻尾をゆらゆらと揺らしている。どうやらぶんぶん振りまわしそうになっている尻尾を必死に抑えているらしい。
あーあ、袴があんなに揺れて。裾の広い袴であれじゃ、普通のパンツは履けな……
「あれ?」
尻尾を隠さなきゃならないとしたら、スカートじゃないと無理っぽい。
それは今気づいた。しかし、さらに発展すると、耳を隠したまま買い物が出来るか?
……
「リルカ、先に帽子を買いに行こう」
「帽子、ですか?」
「ああ、リルカに似合ってて、……その、耳が痛くないやつな」
「はい!!」
と、いうわけで帽子売り場に来たが、やはり商品のことが良くわからない。店員さんを予防課とも思ったのだが、ヘタをするとルリカの耳を見られてしまうのかもしれない。そう思うと、安易にえとぉかりるのは良くないような気がした。
「さてと……耳が痛くない帽子、となると……余裕のあるキャスケットか、高さのあるメーテルッぽい帽子かな……えーとこんなんいいんじゃないか?……あ」
――\3,480-
帽子の分際で高ーーーっ!!!
「リルカ、ちょっと……」
「なんですか、ゆーきさん?」
俺の呼びかけにこれ異常ないほどの笑顔で振り返るリルカ。この瞬間に俺はあのお父さんの気持ちを身をもって理解した。
「どーするー、愛full~」
「はい?」
携帯を取り出し、アドレス帳を開き、一番上にある名前に電話。
「おう、沙耶か。 いきなりで悪いんだが金貸してくれ。」
「いや、ちょっと急にいりようでな」
「……あー、えっと、女の子の服そろえるのに必要なのっていくらぐらいだ?」
「あ、あぁ○×デパートだけど……」
「え!?今から来るって……」
「あ、おい!!」
切られた……
なんなんだ?
「リルカ、ちょっと先に何か食べようか」
俺はリルカにそう言って、キャスケットとメーテル帽の二つをレジに運んだ。
デパートの一回にある落ち着いた蕎麦屋で昼食をとる事にした。途中でリルカがペットショップの缶詰の前でよだれをたらしていたことは言うまでもない。
「じゃあ、天ぷらそばと、あんみつで」
結局、リルカの知識は犬の知識に毛が生えた程度のものらしい。犬の知識量がどんなものかは知らんが。
そして、そんなことを考えながら一心不乱に割り箸の紙袋を折っているリルカの顔辛目をそらす。
そこで気づいた。回りのおばちゃんたちの視線を二人占めしていた。
ああ、リルカの和装が珍しいのか?
「まぁ、若いわね~」「可愛らしいカップルよね~」「やっぱり袴っ娘はイイ……」
そういう風に見られてんのか!!
少し気になってリルカを見るとそんなことは一切気にせず運ばれてきたあんみつを逆手でもったスプーンでほお張っていた。
「おなかいっぱいになったか?」
「はい、おなかいっぱいです!!」
そんな会話をしながら店を出たところで胸ポケットに入れていた携帯がなる。
と、同時に
「この、(放送禁止用語)のバカ祐樹がああああ!!!!」
――ドロップキック。
蹴られた。 それを認識したときには俺の体は階段の上へと飛び出していた。
「どぐぎゃあああぁぁぁぁ!!!!」
「ゆ、ゆうきさあん!!??」
リルカの悲鳴に近い叫び声を聞きながら、俺は階段を転がっていった。
「ふぅ、ずいぶんなご挨拶だな、真奈美」
「んだよ、アンタ自分の立場わかってんの? 金借りる立場でしょうが、アンタ」
「ほう……?なんなら今まで貸した分まとめて返してもらってもいいんだぞ?」
「はぁ!?なんで私がアンタに借りた金返さなくちゃいけないのよ!!」
「……馬鹿姉、あれほど言ったのに、先輩からまた、借りた?」
「コイツから借りた金なんて返さなくたっていいのよ!!」
「……つまり、私から、先輩に返すと言って借りたお金も?」
「あ、あれぇ?」
そこでいきなり言い争いをはじめた二人。ここで紹介しておくと、藤倉真奈美と藤倉美奈。
俺の幼馴染である姉妹で、いきなり俺にドロップキックかましてくれた姉が真奈美、多少無口っぽいおとなしいほうが妹の美奈である。
「……先輩、ごめんなさい。今度、馬鹿姐の給料が入ったら、真っ先に返させる」
「いや、気にするなよ、美奈」
「そうよ、美奈、本人がこういってるんだから」
「テメェが返せば万事解決なんだよ、真奈美」
「……それで、先輩。そちら」
と、そこでようやっとなのか、二人の目がリルカを向く。これは恐らく紹介しろ、ということなんだろう。
「あ、あぁ、えーっと、リルカ、ご挨拶」
リルカを促したところで必死に頭の中で言い訳を考える。そして、リルカが。こんにちわ、と名前を言い終わったところ。つまり、余計なことを言わないところでさえぎってその後を引き継いで俺は説明を始めた。
「こいつ、俺の親戚でさ、外国から帰ってきたばっかりなんだよ。それで、荷物が届くまでしばらくかかるからさ。その間の日用品だけでも揃えとこうと思ってな」
「外国? その割にはその格好は……」
「いや、外国って間違った日本文化とか広まってたりするだろ?それでこんなカッコしてきちまったんだよ」
「へえ~」
「……」
どうやら、バカの真奈美は納得してくれたようだが、美奈の視線はどうも疑っているように見えてならない。
「……わかり、ました。 先輩が、そう、言うなら」
「あー、助かるよ、美奈」
そして結局二人もついてきたまま、買い物が始まるのだった。
あれ?そういえばなんで二人ともついてきたんだ?